【後編】「褒められたくて走った少年、プロのラガーマンになるまで」尾又寛汰ロングインタビュー

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引退時の後悔をなるべく減らすために、毎日頑張って練習している。

 尾又選手が今まで生きてきた中で、影響を受けた言葉などあれば教えていただきたいのですが。

尾又選手 僕が感銘を受けた言葉で元プロ野球選手の里崎選手の本に書いてあった「心技体は縦文字だ」って言葉です。

「心技体」って言葉を縦書きすると、「体」が一番下に来る。その上に「技」と「心」が乗っかってくる。

つまりしっかりと鍛えた健康な体の上に「テクニック」がついてきて、自ずと強い「メンタル」がついてくるってことなんです。

これってラグビー以外でも使える考え方だと思っていて。
例えば仕事を頑張る上でも、まずは健康でいることで課題と向き合えると思うし、その日々の中でスキルが身について、自信を持って良いメンタルでプレゼンに臨めると思うんです。

 ちなみに、尾又選手は5歳からラグビーを続けていたと思うんですが、もし、ラグビーをやっていなかったらどうなっていたと思いますか?

尾又選手 ヤンキーになっていたと思いますね(笑)

いや、冷静に考えたら「ラグビーやっていなかったら…」って考えることすらできない。
5歳からやっているから、そう言うふうに考えることすらできないと言うか。

高校からラグビーを始めたとかだったら、何か思いつくかもしれないですけど、5歳ってほぼ物心つくかつかないかくらいの時からやっているから、自分の考えがそこに及ばないです。

むしろ「ラグビーをやっていなかったら…」みたいなことを考えると怖いですよ。
不良っぽくなってたかもなぁ。みたいに思っちゃうし。だから、今考えたらラグビーをやれる環境を作ってくれた親には感謝です。

 日々過ごす中で、決めていることはありますか。

尾又選手 決めていることありますよ!
それは「今日トレーニングに行くか悩んだら、絶対に行くようにする」ことですね。
迷ったら絶対に行くようにしていますね。

トレーニングするか悩んでいる時って、行って後悔することはないんですけど、行かないで後悔した経験はあるんですよ。そうなることがわかっているから絶対に行くようにしていますね。

 「後悔」に対して、なにか強い気持ちをもっていらっしゃるんですね。

尾又選手 後悔については思うところがあるんです。
ラグビーチームには年に一回「納会」があって、その年の退団選手が最後の挨拶を行うんです。

その時の挨拶でよくある言葉が「後悔なくラグビー人生を送ることができました」なんです。
僕はそういう言葉を聞いた時に「ホント?!!」って思っちゃう。

どんな、名プレーヤーでも絶対に辞める時は後悔があるはずなんです。

自分も、現役を続けている今ですら、「あの時、ああしておけばよかったな」と思うことはたくさんありますからね。そういった後悔が一個でもある時点で、退団時に後悔がないって言うのはおかしい。

だから、僕はラグビーを辞める時に後悔するのは決定しているんだから、その後悔の幅を自分の中でできるだけ減らそうと思ったんです。そのために毎日、頑張っていますね。

負けたけど良い試合では観客に恩返しができないし、プロじゃない。

 去年、D1に上がれなかった時に、応援の声もある中で、心無い批判を受けたりすることもあったと思うんですが、それについてはどう思っていますか?

尾又選手 正直に言うと、確かに顔の見えないところからの批判はやっぱり嫌です。ただ、スタンドに来てくれているファンからの批判の言葉は、僕はあっても良いと思っているんですよ。

むしろ、観客と言い合いになるくらいのことがあっていい。そっちの方が観客にも僕らが本当に勝ちたいんだって熱が伝わりますよね。

そういったファンの目の前で勝利して、恩返しすることが僕らが本当にやるべきことだと思うので、プレーヤーとしてはそこを頑張りたい。

シンプルに「勝つこと」が、ファンともWin-Winな関係を築ける。負けたけど良い試合だったよね…じゃ、プロじゃないし。

 確かに尾又選手って負けた試合の時は、ものすごい悔しさが伝わってきます。

尾又選手 まぁ…。だからと言って、試合だけ頑張るじゃなくてファンサービスも大事かなと思っています。試合後にちゃんとファンと触れ合うところまでが試合というか、プロとしてやるべきことだと思っています。

負けた試合の後こそ、しっかりした態度を保ちつつキチンとファンと接していこうと考えています。

 とにかく一番は勝つ!ってことですね。

尾又選手 そりゃそうですよ!もう勝ちさえすれば、基本はどんな態度でもいいですから。
「ヘラヘラすんな!!」って言われたとしても、勝った時に言われたら、「別に良いじゃん!」って言っちゃうかもしれませんね(笑)そっちの方が人間味があるじゃないですか。隠すつもりもないですから。

誰かがやりたいと思っていたことを、やれている幸せを噛み締める。

 プロスポーツ選手であることに、非常に使命感を持っているように感じますが、社員選手だった時となにか違いはありますか。

尾又選手 それってたまにふと感じたりするんですよ。「あ、俺、今プロでラグビーやっている」って気づくんです。

例えば、昔、一緒にラグビーやっていた友人たちと食事している時とかに、
「俺は途中でラグビーやめたけど、お前、本当にプロまで行けたんだな!」
って言われる時。
そういう時は自分って幸せなんだな。プロになったんだな。って実感しますね。誰もができることをやっているわけではないという。

誰かがやりたいと思っていたことを、僕はやらせてもらっているんだ。ということを思います。

 小学生くらいの時にふわっと意識していた、ラグビーのプロという場所に辿り着けた。という。

尾又選手 そうそうそう。それが叶っていることに。自分のことなのにびっくりしますよ。他の人の目で初めて気づきますね。

ホンダで社員選手の時も、プロリーグでやっていることには違いなかったんですけど、会社の給料をもらう立場だったから、ラグビーだけで食べている感覚はなかったんですよ。

今はラグビーでのパフォーマンスがそのままお金に直結する立場ですから。
それが、自分の自信にもなるし、モチベーションにもつながりますよね。

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