こんにちは、編集の酒井です。
ラグビーは、ただ試合を観るだけのスポーツではありません。
柏の葉スタジアムでNECグリーンロケッツの試合を観戦すると、そのことを実感します。
ここには、選手やスタッフ、そしてファン(クルー)同士が自然に言葉を交わせる、あたたかな空気があります。
サインをお願いすれば笑顔で応じてくれたり、会場でわからないことがあればスタッフが丁寧に教えてくれる。そんな「近さ」が、柏の葉ならではの魅力です。
ですが、この場所の良さは、ただ距離が近いということだけではありません。
ファンのみなさんは、選手たちの「オフ」をきちんと尊重し、踏み込みすぎない距離感を大切にしています。
声援は、選手への思いやりそのもの。たとえ負けた日でも、ヤジではなく「次、がんばろう」という前向きな声が会場に響きます。
「柏の葉はどのスタジアムよりも居心地が良い場所です」と話してくれたのは、日本全国をグリロケとともに応援してまわる阿部さんご夫婦。
数々のスタジアムを巡ってきたお二人だからこそわかる、ロケッツとファンがつくるこの独特の心地よさを、今回たっぷり語っていただきました。
(聞き手・編集:酒井公太)
試合の日の柏の葉グラウンドは、本当に居心地が良い。

ー
阿部さんたちは見るからに、グリーンロケッツ愛が溢れていらっしゃいますが、どういう部分に惹かれたのでしょうか。
阿部(旦那さま)
一番は、チームがファンを非常に大事にしようとしている「姿勢」ですよね。
グリロケを追って日本全国、様々なグラウンドに応援に行っているのですが、「柏の葉スタジアム」のこの雰囲気がダントツでフレンドリーですよ。チームとファンの距離が近いんです。
ー
そうなんですね!具体的にどのような部分でそう感じられますか?
阿部(旦那さま)
選手も含め、チームスタッフの方々も気軽に声をかけてくれるんですよね。
(…という話をしてくれてるところに、なんと太田GM登場!)
あとは選手たちも、サインをお願いしたら、本当に快く引き受けてくれますし…
試合前の時間からイベントもたくさんやってくれて、ちゃんと楽しめる空間を頑張って作ろうとしてくれている雰囲気は柏の葉開催の試合がダントツで一番なんじゃないかと思いますよ。

「やりますよ!」
ー
まさしく、太田さんきましたね!!笑
阿部(旦那さま)
そうなんですよ。
本当にスタッフさんがめちゃくちゃ親切で、会場のことでなにか質問しても「わからない」って返答されたことが無いんですよね。わかるまで、ちゃんと他のスタッフさんと連携して教えてくれようとしてくれるんです。
きっと太田GMのような方からその部分を徹底しているから、全スタッフにそういった姿勢が伝わっているのかなって感じます。
だからこの場所(柏の葉スタジアム)が居心地が良いんですよ。
オールブラックスとの出会いが、夫婦でラグビーを観るきっかけになった。

ー
そもそも、阿部さんが最初にラグビーに興味を持たれたきっかけってなんだったんでしょう。
阿部(旦那さま)
ラグビーに対して僕が興味を持ったのは、5歳くらいの時でした。
お正月にNHKで放送していた「ラグビーの大学選手権・早明戦」を見た時の衝撃がすごかったんですよね。
「なんだこのスポーツは!?」という驚き。
ルールはさっぱりわからなかったですが、画面から伝わってくる迫力が凄くて…本当に感銘を受けました。それからは、正月になると毎年、「大学選手権をテレビで見る」ことが、我が家の恒例になっていきました。
さらに、その流れで「スクールウォーズ」が始まって、それも見る。というような感じでラグビーにハマっていきましたね。
ー
なるほど!まさに昭和のラグビー人気が爆発的に上がった時期のど真ん中に、影響を受けたということですね。
阿部(旦那さま)
はい笑
ただ、ラグビーを自分でやるのは痛そうだったので、やらなかったんですよ笑
あと、意外とラグビーをやる環境も周りになかったんですよね。
なので、僕は「観る専門」になろうと決めたんです。
ー
では、観戦歴は結構、長く続いているんですね。
阿部(旦那さま)
就職してからは仕事で忙しいこともあって、一時期ラグビーから離れてはいたんです。
ただ、2019年のラグビーW杯の日本大会で、一気にラグビー熱が再燃しました!!
それ以降は、妻と一緒にラグビーを観戦しまくる日々が続いてますね。
ー
奥さまは、もともと旦那さまがラグビーを好きだということは知っていたんですか?
阿部(奥さま)
それが、あまり知らなかったというか…最初は私、ラグビーに興味がなかったんですよ。
私もスクールウォーズは見てはいましたけど、別にハマりはしませんでしたし…。
周りにラグビーをやっている友達もいませんでした。
ー
それでも、旦那さんにラグビーに誘われた時に、行ってみよう!ってなったんですね。
阿部(奥さま)
いや、最初は乗り気じゃなかったんですよ。W杯はチケット代も高かったし笑
阿部(旦那さま)
その時は、もう妻に猛烈にプレゼンですよね笑
日本に世界中のスタープレーヤーが来ることがどんなにスゴイことかを伝えたんですよ。
ただ、それでもやっぱりピンと来てなかったようだったんですけど…。
なんとそんな時に、柏の葉スタジアムにオールブラックスがキャンプをしに来ることが決定したんです!
「このイベントにまずは行ってみよう」と誘ってみたんですね。
それで、一緒に「柏ハカ」を見たり、地元の流経大柏の選手(ワーナーディアンズ選手)たちが行っていたラグビー体験のイベントに参加したことで、妻もちょっとラグビーに対して興味を持ってくれたみたいで。
その後、生でW杯の試合を観戦し、本物の「ハカ」や試合の迫力に感動して…
そこからはがっつりハマってくれた感じですね笑
クルーとして選手と接する「ちょうどいい距離」の作法。

ー
W杯が終わった後は、どのようにラグビー観戦を続けていたんですか?
阿部(奥さま)
どこか固定のチームを応援するのではなくて「W杯に出ていた代表選手」を見に行くという形で観戦に行ってました。
だから、最初はサントリーや、パナソニックの試合を観に行くことが多かったんです。
ただ、しばらくすると、地元・柏の葉にもNECグリーンロケッツというチームがあることに気づいたんですよ。
わざわざ遠くに行かなくても、近くのロケッツの試合を通して、いろんな代表選手が見れることに気づいたんですよね。
阿部(旦那さま)
そうなんですよ。
ただ、ロケッツの試合を見る機会が増えてきたら、ロケッツを応援したい熱がどんどん高まってきまして。
阿部(奥さま)
そのきっかけは、最初に言ったような「スタッフさんや選手たちが、とても親切だったから」なんですよね。
阿部(旦那さま)
スタッフさんや選手たちとコミュニケーションをとっている内に、ラグビー云々よりも、ロケッツの中の人たちが好きになっちゃったんです。
だから、もちろんチームに勝って欲しいんだけど…勝敗関係なく選手たちが怪我なく終わってくれるかどうか。
今は、そこが僕らは一番気になりますよね。
阿部(奥さま)
そういえば、スタッフさんとの距離感で、印象的なエピソードがあって。
アウェイの試合へ応援しに行った時に、いつも良くしてくれるスタッフの有馬さんが目の前を通ったんです。
その時に「ありまさーん!」って声をかけたら、相手チームのファンの方にすごい驚かれたんですよ。
「チームスタッフさんの名前も把握されてるんですね?!」って。
柏の葉でいつも声をかけてくれるから、私たちにとっては普通だったんですが、実は普通じゃなかった。って気づきましたよね。

ー
阿部さんもそうなのですが、ロケッツのファンの方々って、スタッフや選手との触れ合い方…というか距離感がすごい上手だな。って僕は思うんですよ。良い意味で踏み込みすぎないファンがほとんどだと思っていて。
阿部(旦那さま)
基本的なことですが、選手にとってスタジアムの外にいる時は、「オフ」じゃないですか。
だから、遠征先での移動中や、それこそ街の中で彼らにあった時は、なるべくそっとしておいた方が良いかな。と僕は思っています。
ー
交流をするにも、思いやりが大事ってことですね。
阿部(旦那さま)
あとは、チーム側も試合が終わった後に「アフターマッチファンクション」という機会も作ってくれていますしね。

ー
アフターマッチファンクションは、誰でも参加できるんですか?
阿部(旦那さま)
いや、それは基本的には(ファンクラブで)抽選なんですよね。
(※それ以外にも当日のイベントで参加権利をプレゼントしているようです。)
ただ、申し込めば参加できるチャンスは誰にでもあります。
アフターマッチファンクションだと、選手一人一人の個性がちゃんとわかるというか…
話すのが得意な選手もいれば、シャイな選手もいるってわかるんですよ。
だからそういう個性がちゃんとわかると、選手と丁寧に付き合おうって気持ちになりますよね。
彼らが、気持ちよく勝利に向けて準備できるように、僕らクルーも選手たちと節度をもって付き合う必要があると思うんですよ。
阿部(奥さま)
でも、ここって本当に難しいところだと思うんです。もしかしたらチームとして、なにかルールを決めてもらった方が、もっと選手とクルーが触れ合いやすくなるのかな…とも思うんですよね。
ただ観るだけじゃない。「応援したい人たち」がいる場所へ。

ー
阿部さんたちが会場に足を運ぶのは、応援したい人たちと関係性がしっかりあるからなんですね。
阿部(奥さま)
それは本当にそうですね。ただラグビーを観たいならテレビで観ても良いんです。
私たちが足を運んでいった先に、手を振って応援できる相手がいるっていうのは大きいですよね。
選手もしっかりとそれを観てくれていますし。
阿部(旦那さま)
あと、思うのが、ロケッツって昔ながらのファンの方もすごく優しいんですよ。
新しいファンにも、ウェルカムなムードをちゃんと出してくれるというか、垣根がすごい低い気がします。
多分そのおかげで、他のチームと比べても、子供のファンも多いイメージがありますよね。
ー
確かに!子供さんが大きな声で応援しているイメージがものすごくあります!
阿部(旦那さま)
そうそう。変なヤジを飛ばす人たちも、あまりいないじゃないですか。
民度が高いんです。グリロケのクルーは。
ー
確かになぁ。会場が殺伐とした記憶はないです。フーリガン的な人は皆無ですもんね。
阿部(旦那さま)
多分、クルーみんなが、柏の葉の「居心地の良い空気」を壊したくないって思ってくれているんですよ。
敗戦後にヤジで終わるんじゃなくて、次、頑張ろうって声を出せるファンが多いんだと思いますね。
そこの裏には、選手たちが全力でやった結果だから。という「敬意」がファンの中にあるからだと思うんですよね。
それが僕らファンにできる一番良い応援の姿勢だと思うんですよ。
ー
応援する側にも、応援するための心構えがあった方が良いってことですね。
阿部(奥さま)
そうです。
ただ、レッドカードを出したような時には、怒っちゃいますけどね。
何やってんの!チームに迷惑かけちゃダメだろーって。
気をつけたら防げるプレーはやっぱりダメだとは思うんです。
ー
阿部さんご夫婦のように、ラグビーをこれだけ観ていると、ルールについてもかなり詳しくなってきそうですね。
阿部(旦那さま)
試合を観ていてペナルティーがあった時にどんなペナルティーかを調べたり、新しくルールが変わった時も調べて覚えました。
例えば、「オフサイド」にも 色々あるんですよね。ラインオフサイドやキックオフサイドだったり。
気をつければ防げるペナルティーなので、何してんだよ〜。って思う時はあります
阿部(奥さま)
あとは、レフリーのジャッジで試合の流れが変わるので、そこにも注目しています。
ー
少しルールを知っているだけで、試合の見方がだいぶと変わるんですね。
阿部(奥さま)
そうかもですね。勝敗の理由がよくわかるようになるんですよ。
阿部(旦那さま)
ボールを持っている選手以外もやっぱり見るようになりますよね。
ラインの並びとか、あとはスクラムとかも。ラグビー観戦の面白さがぐっと広がりますよね。
ー
ラグビーって阿部さんたちのような、通訳みたいな人が、もっとたくさんいれば良いのにって思うんです。
阿部(旦那さま)
一度、フミさんがトレーニングマッチの時に解説してたじゃないですか。あれがスゴイ良かったんですよ。
ラグビーのルールがどうこうじゃなくて、「見どころ」的な部分をしっかり話してくれて。
ああいう音声を聞きながら試合見れたら、見る側ももっと楽しめるとおもうんだけどなぁ。
(終わります。)