もはや応援旗の方が自分を動かしている!ハタ坊・吸ちゃん

  • URLをコピーしました!

こんにちは、編集の酒井です。
ホームの柏の葉だけじゃないんです。
どこのアウェイでも、大きな緑の旗を振って、
頭には2本のフラッグを立ててる─そんなクルーがいるのを、知っていますか?

Jスポーツの中継で、その姿を見かけた人も多いかもしれません。カメラに映る確率、ほぼ100%。
“名物”という言葉が、なんだかぴったりくる風格。
その人は、ハタ坊・吸ちゃん。

なんと、20年近くもNECグリーンロケッツを応援し続けている、筋金入りのクルーです。

実は、昔むかし、NECの社員応援団の前に、「有志の応援団」というのがあったんです。
それを我孫子の仲間たちと一緒につくったのが、吸ちゃん。選手たちがふらりと寄るような、スポーツバーの常連たちとね。

そして、コロナ禍を経て社員応援団がなくなっても、旗は振り続けているんです。

そんな吸ちゃんに、聞いてみました。
どんな景色を見て「応援する」ということに、どんな想いを持っているのか。

見た目はちょっとワイルドだけど、
話してみると、陽気で、お茶目で、笑いの絶えない人でした。

もしグラウンドであの旗を見かけたら、ちょっと話しかけてみてください。きっと、応援がもっと楽しくなると思いますよ。

(聞き手・編集:酒井公太)

目次

勝手に始めた「応援旗」が、みんなのものになるまで。


僕の勝手な印象なんですが、吸ちゃんって大きな旗をグラウンドで振っている割には、「自分が目立とう」とか、そういうことを感じさせる雰囲気がないと思っていまして。

あくまで「グリロケの応援団は、これだけいるんだぞ!」という雰囲気を大きくするために、そこにいることを大事にしている印象があるんです。

吸ちゃん
あぁ、ありがとうございます。
最近は確かにそういう想いで旗を振っているかもしれませんね。

ただ、最初にラグビーの応援に行ったきっかけは、今とは全然違ったんですよ。実は地元の先輩と「Jスポーツの中継に映ろう!」みたいなノリで始めたんですよね。
みんな、なんとかして目立とうとして緑のアフロつけたり、私はこんな感じで、頭に旗をつけたりして。っていうところから入ってるんですよね。

その一連の流れで、今振っている大きい旗も作ったんですよ。
だから、最初は応援旗が4本あったんです。よく応援に行くメンバー4人が一人一本ずつ持つ形で。


へぇー!最初は「目立ちたい」から入っていたんですね!

吸ちゃん
ただ、ある日、私が応援に行く時に、「応援旗」を忘れてしまった時があったんです。
そしたら、グラウンドに来ていた周りのNECのクルーの方々から、

「あれっ?今日は応援旗ないの?!」

っていうがっかりした雰囲気がものすごく感じられて。
意外と求められていたことにそこで気づきました(笑


自分のために振っていた旗が、思いのほか他のクルーの楽しみになっていたんですね!

吸ちゃん
はい。そうだったみたいなんです。
あと、私は本当に「旗の人」のイメージが強いみたいで。

コロナの時って、実は「旗振り」は禁止だったんですよ。
だから、応援旗を持っていかず、頭に旗をつけるのもやめて、応援に行っていたんです。

ただ、コロナが明けて、また旗を振れるようになって頭に旗もつけて応援に行くと、いろんなクルーに言われるわけです。

「ひさしぶり」って。
いや!私、ずっと応援に来てたけど!(笑
ってツッコミたくなりましたが、「旗」で自分のことを認知されている方が非常に多かったんですよね。


みんな吸ちゃんが振る「旗」を見ていたんですねぇ〜。

吸ちゃん
ええ。
だから、その時点で私が応援に行くからには、旗を降らない限り、一人のクルーとしてカウントされていないんだなぁと思うようになりましたね。


結果的に、クルーの役に立っていたんですね。

吸ちゃん
あとはラグビーって初めて観る方には、本当に難しい競技だと思うんですよ。
ルールがわからなくて、試合見ていてもわからないことが多かったり。

そういう人たちにこの「旗振り」が少しでも良い思い出になればと思っていますね。
グラウンドの思い出の一つになったらいいかなぁ。って。


吸ちゃんご自身が「名所」のような役割になろうとしているんですね。

吸ちゃん
確かにそうかもしれません。
それこそ、実際によくあることなんですが、ご友人とはぐれてしまったような方が僕の隣で、

「今、大きい旗の下あたりにいるから!」って、スマホで連絡取り合っている姿はよく見ます(笑

そういうのを見ると、少しはお役に立ててるかなぁ。って思いますよね。

NECの選手と酌み交わした、日本選手権優勝の乾杯の味が忘れられない。


吸ちゃんは体もかなり大きいですが、もともとラグビーをされていたんですか?

吸ちゃん
いや、やってなかったですね。空手部でした。


そうなんですか。ではラグビーにどのようなタイミングで興味を持たれたんですか?

吸ちゃん
もう20年くらい前ですけど、当時、我孫子にあった「レジェンド」ってスポーツバーで飲んでいる時ですね。
そこへ通うようになってから、色々な他の常連さんと仲良くなったんですけど、その常連の中にラグビー選手も何人かいたんですよ。

話した感じ、すごい感じも良くて「良い奴らだなぁ」とは思っていました。

そんな彼らが、ある日「ラグビーの試合見に来てくださいよ!」ってお願いしてきてくれたんですね。
だから、「私も彼らが出てるなら見に行ってみるか。」と思って観に行ったら、試合は負けちゃって。


最初の観戦試合が負け試合だったんですね。

吸ちゃん
はい。しかも、本当にラグビーのことがわからない状態で行ったので…正直その時は全然面白くなくて。
しかもですよ、「レジェンド」で誘ってくれたラグビー選手たちは一人も出てなくて(笑


誘われたのに(笑

吸ちゃん
はい。でも、まぁ、そこで逆に火がついたというか。
誘ってくれた選手たちが試合に出て勝つ瞬間を見るまで、ラグビーを見続けてみるか!
っていう気持ちになったんですよね。

それで、その後、また試合を見に行った時の衝撃がすごくて。
今でも鮮明に覚えているんですけど、2006年の2月に行われた日本選手権の決勝。
相手は東芝ブレイブルーパスだったんですけど、6対6で同点優勝だったんです。

寒い雨の中で、ものすごい激しい試合で。
その試合は、東芝側がNECを圧倒的に攻めている時間が長かったんですけど、それを守り切っての同点優勝でしたね。

ちょうど私はその時に、自陣のゴール裏で応援の横断幕をみんなで持ちながら観ていたんです。2月の雨天の下、びしょ濡れになりながら本当に寒い中、観ていたんですね。


基本的には、ずっとNECが守っている試合だったんで、目の前で背中から湯気が上がっている緑色の選手たちが、東芝の選手たちを壁となって守っているような感じでしたね。

その試合での選手の姿を見て、一気にハマったんですよね。その時に横断幕を一緒に持った方々ともいまだに繋がりがあります。

さらに、試合が終わった後に、スポーツバーの「レジェンド」で飲んでいたら、さっきまで応援していた選手たちも合流してきて。日本一になった選手たちの表情はやっぱりスゴイ良いんですよ。

あの時に選手たちと一緒に飲んだ酒の美味さも忘れられないっていうのはありますよね。


その時に、我孫子はラグビーの街だって実感されたんですね。

吸ちゃん
そうですね!
ちなみに、今日着てるこのTシャツも、その時の優勝を記念して作ったTシャツなんですよ。
その時、NECは4連覇を達成していまして。

ここの腕についている4つの星はそれを表しているんですよね。


じゃ、本当に最初は「我孫子の気の良い飲み友達」がラグビー選手だった。
というところから始まっているんですね。

吸ちゃん
そうなんです。
だから、今振っている大きな旗も、我孫子で一緒に飲んでいたおじちゃんたちとお金を出し合って作った感じですね。
その旗を作った応援メンバーの生き残りが、私ってことです。

「応援旗そのもの」が自分を動かしている。


吸ちゃんって柏の葉でお会いした時は、いつもお酒を飲まずに硬派に旗を振っているイメージがありますが、応援中はあまりお酒は飲まれないんですか?

吸ちゃん
本当は飲みたいんですよ。
ただ、柏の葉へ応援に行く時には、仕事の合間だったり、娘と一緒に応援しに行くことが多いので車を運転して行くことが多いんですよね。

その分、遠征に行った時はしっかり飲みますよ(笑
ただ、アウェイの試合はドキドキしますよね。どれくらいクルーが来てるのかなってことも考えますし。


20年近く応援していても、やはりそこはドキドキするものなんですね。

吸ちゃん
実は、昔と今でだいぶ応援環境が変わったんですよね。

トップリーグの時は、試合運営そのものがトップリーグ側のやり方で行われていたので、全試合、基本的に同じプログラムで行われていたんですよ。

要するに、試合を始める前の選手の紹介の仕方からセレモニーの仕方まで、どのチームも全部一緒だったんです。
しかも、その時はチームに地域名も入ってなかったから、そもそもアウェイとかホームって考え方も無かったに等しかったというか。


その時は、「NECグリーンロケッツ」で名前が終わっていたんですね。「東葛」がまだついてなかった。

吸ちゃん
そう。その分NECについているファンも日本中にいるって感じだったんですよ。
だから、その時代は遠征に行くと、どの会場にもいつも挨拶を交わすNECのファンがいたんです。

ただ、リーグワンになったら、その方々がいなくなっちゃったんですよね。
敵の応援団の中に、緑色の旗がポツンみたいになっちゃってたんですよ。それは結構な衝撃でしたね。


そんな衝撃を経ても、今なお、応援旗を振り続けているのはなぜですか?

吸ちゃん
もう、自分だけの気持ちじゃ、旗振りをやめられないんですよね。

あの旗自体、みんなでお金を出し合って作ったものですし、手元にある以上は旗を振り続けた方がいいのかなぁ。って思うんですよね。


もう「応援旗」そのものが、吸ちゃんを動かしている感じになってるんですね。

吸ちゃん
本当にそうですね(笑


そんな吸ちゃんにとって、「応援する」という行為はどういうものなんですか?

吸ちゃん
楽しいんですよね。応援することが。
別に誰かに頼まれてやっているわけでもないですが、やっぱり応援をしている時は楽しいですから、自分の性格に合っているんでしょうね。


確かに吸ちゃん、見た目が応援団っぽいですもんね。

吸ちゃん
いやいや(笑
でも、実はNECにもトップリーグの頃には、応援団があったんですよ。

それこそ「レジェンド」のマスターが常連を集めて、みんなでタイミング合わせて声出しとかしてたんですよね。
その後にNECの社員さんたちが応援団を結成されて、僕らも合流して一緒に応援していたんです。

その時は、相手チームの応援団長が、僕がビジュアル的に目立つからってエールの交換をしに来てくれたりとか、柏の葉以外の試合でNECの社員さんがあまりいない時には、代わりに応援団のコールリーダー的なこともやらせてもらっていましたね。

リコーブラックラムズのコールリーダー・めぇさんと。

今ではNECの社員さんたちの応援団はないみたいですけど、チーム側から逆に「こういうふうな応援をしてほしい」みたいな要望があれば、一緒に協力して柏の葉を盛り上げることができると思うんですよね。


それは、僕も本当にそう思います。
吸ちゃんのように、かつて存在したNECの応援団を知っている方々がまた団結していけば、もっと会場での応援の声を大きくできる気がするんですよね。

吸ちゃん
はい。本当にチームのスタッフさんともコミュニケーションをとって、一緒に盛り上げることができればって思ってます。どこかのタイミングで話し合いたいですよね。

(終わります。)

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
目次