NECグリーンロケッツのファン=通称クルーたちの熱い想いをインタビューし、
次のクルーに繋げていくこの企画!
第十三回目は、グリロケのアシスタント・ゼネラルマネージャーの辻高志さんにお話をお伺いしてきました。
選手としてはNECラグビー部を日本選手権の王座に導き、その後は早稲田大学ラグビー部のコーチ・監督、そしてグリロケのコーチも経験。
「自分の中でラグビーはやり切った」という想いから一度はNECの本社に勤める会社員となりましたが…
6年の時を経て、今、再びGR東葛に戻ってきた!!
まるでドラマ「ノーサイドゲーム」の主人公の君嶋を地でいくような辻さんの人生。
「柏の葉グラウンドを満席にすることで東葛をもっと面白い街にしたい」という目標に込められた想いをしっかりとお届けしたいと思います。
愛されるチームになるには、選手一人一人の「人間力」が重要。
インタビュアー酒井:
グリーンロケッツの柏の葉での開幕戦、来場者数5000人を超えましたね!
辻さん:
本当にみなさんのおかげです。
実は、今私どもでは次の目標がありまして、3/24のホーム最終戦、豊田自動織機シャトルズ愛知との一戦の時には、来場者数1万人を目指しています。
やはりどんどん上を目指さないと…ということで1万人ですね。
そのためにも初戦の浦安D-Rocks戦のような「見ていて面白い試合」をこれからもする必要があると考えていますね。
コトブキ小野社長:
確かに、あの試合はラグビーの面白さが詰まっている試合でしたよ。
一緒に連れていった友人もあの試合をきっかけにハマっていましたからね。
辻さん:
ありがとうございます!
その面白い試合を見にきて頂くのに必要なのは、まず地元・東葛の方々にNECグリーンロケッツというラグビーチームがあることを認知してもらうことなんです。
そのために様々なイベントで街の方々にラグビーボールを触る体験をしていただき、地道に皆様にラグビーを知ってもらっていることを行なっています。
そして、それを行う上で本当に大事なのは選手たちの人間力だと考えています。
「愛される選手であり、愛される人間である」ということですね。
その延長線上に「愛されるチーム」という結果がついてくればと考えています。
インタビュアー酒井:
チームミーティングなどで「人間力」についてみなさんで話あったりもするのでしょうか?
辻さん:
はい、ありますね。
というのも、今シーズン就任したゼネラルマネージャーの太田治からチームへの最初のプレゼンが、
「愛されるチームになるための人間力をつけよう」というものだったんですね。
さらに、その少し後にチームにジョインしたウェインHC(ヘッドコーチ)が選手に最初に伝えたことが、
「HARD」という4文字をとても大事にしているということだったんですね。
「H=honesty」=正直であれ。
「A=attitude」=しっかりとした態度でラグビーに挑む。
「R=respect」=敬意をしっかりと払う。
「D=discipline」規律正しい行動を。
ということをチームに一番最初に伝えたんです。
二人とも選手にまず最初に伝えたことは、「人間力」についてだったんですよね。
そういうこともあり、日々良き人間力を身につけるために、チームとしても努力を続けているという形です。
選手のポジティブなところを見つけ、伸ばしていく声がけ。
インタビュアー酒井:
辻さんのご担当されている「アシスタント・ゼネラルマネージャー」はどのようなことを主にされているんですか?
辻さん:
主には、チームの一体感を作る役割を担当していますね。
ラグビーリーグが「リーグワン」としてプロ化したことによって、様々な選手がチームに加入してくる状態になりました。そうなることで以前の企業チームと比べて、チームの一体感を作るのが難しくなってくるわけですね。
その一体感をいかに形成していくかという部分のマネジメントを担当していますね。
やはりそこでも「地域に愛されるチームを作る」という目標で選手たちにアプローチしています。
インタビュアー酒井:
具体的にはどのように選手たちに働きかけをしているんですか。
辻さん:
私から働きかけるというよりも、選手たちの日頃の行動を見て声がけをするという形が多いですね。
例えば、選手たちが地域への貢献活動を行なった場合に、その行いをしっかりと見ておく。
そして、選手たちの行動の結果、何が起きたかを伝える。
彼らの行動によって起きた「良かったこと」をきちんと伝えるようにしています。
例えば、彼らがオフの日を返上して地域の貢献活動を行なったおかげで
「ファンの方から感謝の手紙をいただいた」という成果をしっかり伝えるというようなことです。
チーム状態はネガティブなことを言っても良くならないんですよ。
それよりもポジティブな所を探して見つけて伝えて、選手たちの人間力を伸ばしていく。
グリーンロケッツの選手たちは元々地域の皆さまに対してフレンドリーなメンバーが揃っているので、本当によく頑張ってくれていると思います。
インタビュアー酒井:
褒めることで人間力が伸びるということなんですね。
一方で、チームの中でなかなか試合への出場機会が得られない選手たちに対してはどのように接していますか。
辻さん:
それもよく見ることが大事だと思っていますね。
なるべくグラウンドに出て練習中の選手たちを見るようにしています。
試合に出れない状態でも頑張れるのかどうか。チームに貢献できているかどうか。
その中で、何か「ちがうな」と思う行動をしている選手がいれば、声をかけるようにしていますね。
ただ、今のGR東葛の選手たちの中ではそういった行動は見受けられません。
ウェインHCも選手一人一人と面談したり、練習試合をこまめに組んで全ての選手に出場機会を与えてくれたりと、丁寧にケアしてくれますので、今は良いチーム状態にあると思います。
ラグビーの原点「前へ」という言葉が生んだ衝撃的な経験。
インタビュアー酒井:
辻さんは元々グリロケの選手としてもご活躍されていたんですよね。
辻さん:
はい。2008年までは選手としてプレーをして、
その後、早稲田大学のコーチ・監督を3年間、NECから出向という形で経験させていただきました。
さらにその後3年間、グリーンロケッツのコーチもさせてもらったんです。
そこまでやった後に、「十分ラグビーはやり切った」という気持ちがありまして。
ラグビーから完全引退という形で、普通にNECのサラリーマンとして働き始めたんですよね。
ただ、今はまたチームマネジメントという立場でラグビーに携わらせてもらっています。
インタビュアー酒井:
辻さんがそこまで打ち込んだラグビーから、得ることができた価値観などありますか?
辻さん:
はい。私は常々「まっすぐ生きたい」と思っているんですね。
人生の中で色々迷う場面、寄り道などもあるでしょうけど、死ぬ間際には「まっすぐ生きた人生だった」と思って死にたい。
そうなるための手段として、今も「ラグビー」に携わっていると思っているんです。
今、選手たちをマネジメントする立場になって彼らに願うのは、芯が通った「まっすぐな選手」「まっすぐなチーム」になってもらいたい。ということなんです。
実は、今話したような「まっすぐ」という価値観は、自分が選手の時にはなかなか気づけなかったものです。
技術的に「うまくなりたい」という気持ちはずっとあったのですが、ラグビーをやる意味を考える機会があって…。
その時に自分は「まっすぐ生きたい」んだな。と思ったんです。
その生き方を体現する上で、自分の中でラグビーと関わることはものすごくプラスになっているんです。
ラグビーをやる上でも、マネジメントをする上でも…何事においてもこの価値観は役に立っています。
インタビュアー酒井:
今、お話しされた「考える機会」というのはどのようなものでしたか?
辻さん:
実は今、チームのゼネラルマネージャーをやっている太田から、衝撃的な経験をもらっているんですよ。
私がまだ選手だった2002年。
私が所属していたNECは東日本社会人リーグ戦全敗、7チームのリーグで最下位だったんですよね。
ただ、そこから巻き返して一発勝負の日本選手権トーナメントで優勝できたんです。「ミラクル・セブン」と呼ばれていた時ですね。
当時チームが低迷している中で、私はバックスとして、いろいろ戦術などを考えなければ…と気を揉んでいました。
そして自分の考えたことをびっしりノートに書いていって、当時監督だった太田さんにリーダーミーティングの時にぶつけてみたんです。
ただ、その時太田さんから帰ってきた言葉は一言。
「GO FOWARD(ゴーフォワード)だ。とにかく前に行こう。」
これを言われた時
「そう来たか…!!」
と驚いたのと同時に…これがラグビーの原点か。と納得もできたんです。
元・明治大学ラグビー部監督の北島忠治氏も同じように
「とにかく”前へ”」
という言葉を残していまして、当時の自分の中で「前へ」という考え方がとても必要なことだと思えたんですね。
とにかく“前へ”。
ためらわずに“前へ”進め。
それはつらく長い道のりかもしれないが、
ゴールへの最も近い道であると僕は確信している。
参照:前へ|明治大学
色々と細かい戦術を考えるのではなく、シンプルに「前へ」という気持ちをまず持つ。
その言葉をもらってから、チームの状態が良くなって、一気にぐわーっと連勝できたんですよね。
ラグビーの原点はそこなんだな…と。私の中でターニングポイントになった経験ですよね。
インタビュアー酒井:
先ほど辻さんがお話しされた「まっすぐ生きたい」もそこに繋がってくるわけですね。
辻さん:
そうですね。
その言葉をもらってからはラグビーに対する考え方が変わりましたね。
細かい駆け引きも必要なんですが、それよりも土台となる「前へ」という気持ちが最初に必要だと考えるようになりました。
その気持ちがあって初めて「戦術」が生きてくるんですよね。
(続きます。)